授業に関する業務:学級担任の重圧 学級担任は、日々の授業において以下のような多岐にわたる業務を(多くの場合、全教科分)こなしています。
授業の準備 授業の目的の明確化、教材研究、授業展開の構想。さらに、補助資料やプレゼン用のデータ作成、授業中に使用するプリントやフォーマットの用意などを行います。
授業の実践 実際の指導を行います。
授業後の処理 児童たちの評価のまとめ、小テストの実施と採点。ドリルや授業中に使ったプリントの回収・処理・評価記録の作成、そして提出物の確認と評価を行います。
従来、学級担任は自分のクラスの全授業を担うため、1時間の授業ごとにこれだけの業務が発生していました。教科担任制を部分的にでも導入すれば、同じ内容の授業を複数のクラスで行うことができるため、特に「1. 授業の準備」にかかる時間は大幅に削減できます。では、なぜ担任の負担は減らないのでしょうか。それは、「授業に関係しない業務」が膨大だからです。
授業以外の業務:肥大化する校務分掌と担任業務 学校組織には「校務分掌(事務分掌)」があります。本来は、基本的な分掌(教務、総務、経理、行事、視聴覚、図書など)と、学年・学級の業務(担任業務)だけで回っていたはずですが、時代とともに新しい課題が次々と追加され、組織だけが肥大化しています。
現在、一人の学級担任が抱える役割は以下のようになります。
学年・学級運営: クラス運営に加え、学年部会への参加。さらに日本の場合は、休み時間、給食時間、掃除の指導といった生活面の指導も「担任の業務」として重くのしかかっています。
各種研究会: 教科(国語、算数など)の研究会に加え、教科外(道徳、英語、特別活動など)の研究会。
各種委員会・担当業務: 児童指導部、特別支援教育部、いじめ防止対策協議会、人権教育協議会など。
例えば、ある担任の先生は「5年担任」をしながら、「国語専任」「図書担当」「教務」「児童指導」「特別支援」「いじめ防止」「人権」を一人で兼任することになります。 その結果、書写展や文集の指導・事務手続きを行い、教務として職員会議の資料をまとめ、図書担当として読書感想文を取りまとめます。各種会議や人権教育の研修にも必ず参加し、支援が必要な児童がいれば個別の資料を作成して全体へ周知しなければなりません。 これに加えて、教育実習や初任者研修の師範授業、登下校指導のための資料作成や実地指導なども重なります。さらに各学校で行われる「授業研究会」のために指導案を作成し、他の教員に授業を見てもらい協議する会まであります。
大雑把に書き出しても、学級担任がどれほど常軌を逸した量の業務を抱えているかがお分かりいただけると思います。
現状の課題と今後の展望 「授業研究が日本の教育の要だ」と主張する学者もいますが、そこに費やしている膨大な時間と労力に見合うほど、授業改善に直結した例を私はほとんど見たことがありません。
これまで、日本の学校は「足し算」ばかりをしてきました。組織図を見れば、次々に新しい業務を継ぎ足してきたことが分かります。人員が増えない状況下で業務だけを増やせば、現場が破綻するのは必然です。 現状を打破するためには、ともかく人員を増やすことが不可欠です。それに加え、AI活用を阻む様々な制約を早期に撤廃し、AIの力で効率化できる業務を次々と見つけていかない限り、先生たちが本来の「授業」に力を注げる状況にはなりません。
「コスパが良いから」「先生たちが身を粉にして頑張ってくれるから」という方法論に依存し続ければ、学校の先生になろうという志望者は今後減るばかりだと思います。


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