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2026年4月16日木曜日

小学校の教員採用試験が、人気がない理由は何でしょう。

2024年の小学校の教員採用試験を受けた人は3万5000人弱で、平均倍率は2倍だということです。ちなみに、小学校の教員免許を取った人は約2万7000人。確かに、その年に教員免許を取った人よりも多くの人が受験しているわけですから、納得といえば納得できる人数です。しかし、近年小学校の教員免許が取れる大学の数はかなり増えています。じゃあ、受験資格を持っている人が他にはいないのかということになります。

従来は採用試験の倍率が高く、教員になりたくてもなれない人が多くいました。その人たちは、臨任(臨時的任用教員)や非常勤講師をやりながら、翌年の採用試験を受けていたわけです。しかし、ベビーブーム世代の先生たちが大量退職し、少人数学級化などで学級数が増えたことで、大量採用時代に突入しました。その結果、臨任や非常勤をやっていた人たちが次々と正規の職員になり、採用試験を受ける人たちの「ストック」が減少していったのです。教員免許の取得状況については以前少し詳しく書きましたので、興味があれば見てみてください。

それだけではなく、社会全体で人手不足が叫ばれるようになっています。民間企業も初任給40万円などというインパクトのある金額を提示し、学生を集めています。 給与の話も以前書いているので、それを見てもらえば状況が少し詳しく分かると思いますが、一般的な企業と教員との間で、基本給にそこまで大きな差があるわけではありません。特に都市部ではそれほどの違いはないと思います。しかし、決定的な違いは「残業代があるか、ないか」です。ここで、月々の給与に大きな差が出てしまっています。

教員免許をとるためには、教育実習をやらなければなりません。これも、教員採用試験を受けるのを躊躇う理由になっているかもしれません。民間企業のインターンシップと同じように、教員の業務を実体験し、授業を行い、約1か月間子ども達と直接触れ合っていくのが教育実習です。そこでどのような体験をしたかも、進路に大きな影響を与えると思います。 僕が実習に来た学生に聞いた話では、先に教育実習を終えた友人たちが「帰る時間が遅いこと」や「なかなか指導案にOKをもらえずに苦労したこと」などを語っていたそうです。よく言えば、熱心に指導し、よい先生になるための基礎を築いてあげようという現場の先生たちの想いがあるのでしょう。しかし、それが今の学生には「ただのたいへんさ」としてしか伝わっていないということです。 もちろん、教育実習の指導を任されるくらいですから、現場でも所謂「できる」先生のはずです。学級経営もきちんとできるし、授業もしっかりとこなせる先生なのです。でも、その多くは「(身を粉にして)頑張ることをいとわない先生」だということです。その姿に嫌気が差してしまう学生がいても、何の不思議もありません。

YouTubeやX(旧Twitter)上には、そうした教員の働き方の現状を批判する声が多く流れています。今の学生は情報の収集をSNSに頼っているため、その影響力は計り知れません。確かにテレビのドラマなどを見ても、教員が楽をして働いているような描写は出てきません。フィクションであっても、そうしたイメージの蓄積は影響しているのかもしれません。

複数の要因が絡み合っているとは思いますが


、社会状況や、今のZ世代の学生たちが考えていること・志向していることに対応する施策をとらなければ、この状況は変わらない気がします。最近では、採用試験(筆記)を実質的に免除する自治体も出てきているようです。「大学で単位をとっているのだから教職教養の試験はいらない」という理屈のようですが、それは教員の質が低下することを防ぐ根本的な解決策ではないと思います。

残業代の出ない給与体系(給特法)の限界はもちろんですが、根本的には**「定時退勤が当たり前にできる業務量」**にまで仕事をスリム化しなければ、どれだけ初任給を上げても、免許を取りやすくしても、人は集まりません。AIを活用した事務作業の効率化や、学校が担うべき業務の線引きを国レベルで厳格に行い、「普通の若者が、健康的に長く続けられる職業」へと教職をデザインし直すこと。それこそが、質の高い教員を確保し、未来の教育を守るための唯一の「根本治療」だと考えます。

皆さんは、どう思いますか

2026年3月12日木曜日

どこで働くかで年収100万円の差?教員給与の「地域手当」と民間比較

教員の給与については以前にも触れましたが、現在の公務員の給与制度では、東京都に勤務する教員の給与が相対的に高くなる仕組みになっています。その理由は「地域手当」の存在です。

首都圏の1都3県を見ても、この手当によって大きな差が生まれます。東京23区では地域手当が基本給の20%も加算されるのに対し、千葉県や埼玉県の平均は8%程度にとどまります。この差が積み重なると、50代の年収ベースで約100万円もの開きが生じるのです。

隣接する市町村で生まれる理不尽な給与差

地域手当は、地域間の必要な生活費の差を反映させる目的で、国の人事院や各自治体の人事委員会が等級を定めています。しかし、教員の業務内容はどの地域でも基本的に変わりません。

それにもかかわらず、例えば県内に3つの政令指定都市を抱える神奈川県の場合、横浜市や川崎市に勤めていれば16%の手当がつきますが、それ以外の市町村に勤務するだけで、同じ50代でも年収で40万円ほどの差が出ます。隣接する地域間でこれほどの給与格差があることは、やはり制度的な課題と言えるでしょう。

これが東京都と千葉・埼玉県の比較になれば、先述の通り100万円の差になります。これから教員を目指す方にとって、どこに勤務するかを決める上で、給与は非常に大きな判断材料になるはずです。

プライム上場企業との比較で見える実態

公務員にはストライキなどの労働基本権が認められていないため、代わりに人事院が客観的な数値をもとに給与を算出しています。しかし、過去30年近くにわたり「いかに公務員給与を引き下げるか」という方向で制度改定が重ねられた結果、東証プライム市場に上場するような大手企業とは生涯賃金で大きな差が開いてしまいました。

もちろん、プライム上場企業は日本を代表する大企業であり、優秀な人材を集めるために給与の引き上げに躊躇しない側面もあるでしょう。ですから、公務員と差があってしかるべきだという意見もあると思います。実際に民間企業間でも、50代になれば大企業と小企業で倍近い給与差が生じます。

ただ、民間企業と教員の給与を単純に比較することには注意が必要です。教員などの公務員には性別による給与の差がなく、同じ職務・経験年数であれば同一の給与が支払われます。一方、民間企業では依然として男女間の給与格差が存在することが統計からもわかっています。

この点を考慮すると、特に男性に絞って比較した場合、教員と大手民間企業との実際の給与差は、表面的な平均値のデータ(※ここに表を挿入)よりもさらに開いているのだということをご理解いただけるかと思います。

給与の引き上げが無理なら、別の魅力を

深刻な教員不足についてはこれまでも何度も指摘してきましたが、人材確保のためには給与水準の引き上げが本来「マスト」の施策です。

しかし、財政的な理由ですぐにそれが叶わないのであれば、給与面以外で異なったアピールができるように考えるべきです。一つの提案として、夏休み期間中の教員の特別休暇を現在の5日間から10日間に増やすだけでも、教職の魅力を高める有効な手立てになるのではないでしょうか。

皆様はどのようにお考えになりますか?もしご意見があれば、ぜひコメント欄でお聞かせください。

参考資料

教員の給与
地域(地域手当の割合)20代(約25歳)30代(約35歳)40代(約45歳)50代(約55歳)
東京23区(20%)約450万円約620万円約804万円約870万円
横浜市・川崎市(16%)約435万円約600万円約777万円約840万円
さいたま市・千葉市(15%)約430万円約595万円約770万円約835万円
神奈川県(平均約10%※)約415万円約570万円約737万円約800万円
埼玉県・千葉県(平均約8%※)約405万円約560万円約723万円約785万円
民間企業の規模別給与20代(約25歳)30代(約35歳)40代(約45歳)50代(約55歳)
大企業(1,000人〜)約430万円約580万円約720万円約840万円
中企業(100〜999人)約380万円約480万円約580万円約630万円
小企業(10〜99人)約340万円約420万円約490万円約510万円
プライム市場に上場している企業
年代(目安)20代(約25歳)30代(約35歳)40代(約45歳)50代(約55歳)
平均年収の推計(諸手当・賞与込み)約480万円 〜 520万円約650万円 〜 720万円約850万円 〜 920万円約950万円 〜 1,050万円

2026年3月6日金曜日

【ニュースから考える】なぜ教員免許取得者は増えているのに教員不足が起きるのか

今朝のニュースで、教員不足が大きく取り上げられていました。昨日、文部科学省から発表された「教員不足」に関する実態調査の結果を受けた報道です。このニュースを見て、改めて現在の教員採用のアンバランスさについて考えさせられました。


■ 国立偏重だった時代から、私学で免許が取れる時代へ 私が大学を受験した頃は、小学校の教員になりたければ基本的に旧師範学校の流れをくむ国立大学の教育学部に行くのが当たり前でした。私立大学で免許を取得しようとすると選択肢は極端に狭く、理系が苦手で私立に進んだ私の周りでも、関東で免許が取れる私立大学は当時7校程度しかなかったと思います。 しかし、今は200近い私立大学で小学校教員免許が取得できます。資格取得を大学の売りにする学校が増えたためです。

■ 免許取得者は3万5,000人。なのに倍率は2倍未満 1980年代には約3万人だった小学校教員免許の取得者は、現在では年間約3万5,000人にまで増えています。 一方で、1年間に必要とされる新規の教員数は1万5,000人を切る程度です。計算上は採用試験の倍率が2倍を大きく超えるはずですが、現実は大半の自治体で2倍を切っています。 つまり、「教員免許を持っている人を増やす」という施策だけでは、教員不足は全く解決しないということです。

■ 学生が教職を敬遠するリアルな理由 SNSを開けば、現場からの悲痛なリポートが多く目につきます。教員免許を取得するための教育実習で、現場の余裕のなさを目の当たりにして嫌になってしまう学生も少なくありません。また、民間企業が高い初任給を提示していることも、他業種へ人材が流れる大きな要因になっています。

■ 今までの慣習にとらわれない改善策を 以前から繰り返し主張していますが、まずは以下のことを進めるべきです。

  • 業務時間を明確にし、保護者にもしっかり伝える

  • 夏休みを確実に取得させ、新しい「職業的な売り」にする

  • AIを効果的に利用し、事務作業などの業務軽減を図る

これだけでも、職場としての魅力は大きく変わるはずです。もちろんその他の施策も必要ですが、現場にはすぐにできる改善策がたくさん眠っています。これまでの慣習にとらわれず、本気で改善する努力をすべき時が来ています。

2026年3月1日日曜日

臨任に登録してくれる人、いませんか。

最近、こんな話を聞きました。 ある学校で産休に入る先生がいたのですが、代替の臨任(臨時的任用教員)が来ないそうです。担任を空けるわけにはいかないので、児童指導専任の先生が担任代行をしているとのこと。さらにその学校では、もう一人療休(病気休暇)に入った先生もいて、そちらは専科の先生が担任代行を引き受けているそうです。

同じ時期に二人の欠員が出る。現場ではありうる話ですが、管理職の視点から見ると、この2つのケースは性質が全く異なります。

産休の場合、妊娠が分かり出産予定日が見えてくる頃には、校長は教育委員会へ「〇月に産休に入る職員がいるので手配をお願いします」と連絡を取ります。つまり、教育委員会の人事担当者は、半年も前から「〇ヶ月後に産休代替が必要になる」と分かっているのです。以前なら、これで無事に事は進み、手配が完了していました。産休代替は「予定が立つ欠員」なのです。 一方、療休は突然の出来事ですから、すぐに対応するのが難しいのは十分に理解できます。しかし、今は「予定が立っているはずの産休代替」すら見つからないという異常事態が起きているのです。

実は、臨任の先生の給与は正規職員と遜色がありません。自治体によって差はありますが、新卒であっても月給30万円以上を提示する自治体もありますし、40代・50代のベテランになれば50万円まで段階的に給与が上がる自治体も存在します。

しかし、ここに別の根深い問題があります。「教員経験者が、果たして再び臨任としてフルタイムで働きたいと思うか」ということです。 以前も書きましたが、現在の学校の「働き方」自体が嫌で辞めた人は、待遇が良くても臨任を引き受けるとは思えません。定年退職後の先生方も同じ気持ちでしょう。その結果、「フルタイムの臨任は負担が大きいけれど、非常勤講師なら引き受けてもいい」という流れになるのです。

この非常勤講師の働き方も、自治体によって勤務時間の上限が明確に異なります。東京都なら週26時間、横浜市なら週29時間、川崎市に至っては週35時間といった具合です。これを主たる収入源にするか、あるいは兼業前提で働くかなど、働く側の目的によっても選択肢が変わってきます。

いずれにしても、「臨任としてフルタイムで現場を支えたい」と登録してくれる人が決定的に不足しているのが今の教育現場の現実です。 学校現場は、教員が離れていかないよう「働きやすい職場づくり」に今すぐ本気で取り組まなければ、この先もずっと人員不足に悩まされ続けることになるでしょう。

2026年2月10日火曜日

【現場の悲鳴】「先生が一人足りない」は、単なる1コマの負担増ではない

■「家庭科」の授業を担任が持つということ  学校現場で「専科の先生が一人配置されない(欠員)」という状況がいかに深刻か、具体的なシミュレーションをしてみたいと思います。

 例えば「家庭科」です。週1.5コマ(2週で3コマ)の配当ですが、実習準備や後片付けが必須の教科です。専科の先生がいれば、複数のクラスを連続して授業することで準備・片付けを効率化できます。  しかし、これを担任が持つとなると話は別です。

  • 空き時間が消滅する

  • 準備・片付けの時間が新たに発生する

  • 慣れない実習手順の確認作業が増える

 結果として、他の教科の準備や採点業務がすべて後回しになります。感覚としては、授業1コマの負担増ではなく、**「3時間分の業務ロス」**が発生するのに等しいのです。

■「月44時間」の残業が生む矛盾  こうした業務のしわ寄せは、すべて時間外勤務に直結します。  よくある勤務実態として、朝30分、放課後1時間半の残業をしたとします。

  • 1日2時間 × 22日 = 月44時間

 これは、労働基準法の原則的上限(月45時間)ギリギリの数字です。しかし、教員の場合は給特法の壁があり、これを「残業」とは呼んでもらえません。

  • 現状: 月額約1万6千円(調整額)のみ支給

  • 本来: 年額約150万円相当の残業代が未払い(試算)

  • 罰則: いくら働かせても管理職への罰則なし

 給特法制定当時(昭和40年代)の「残業月8時間」という前提は、もはや完全に崩壊しています。


■「1兆円」を惜しんで現場を疲弊させるのか
 もし今、教員に正当な残業代を支払うと、国全体で約1兆円が必要になるそうです。国や自治体がこの問題に口をつぐむのは、結局のところ「教員の健康より予算が大事」だからではないでしょうか。

 若手教員の増加に伴う産育休の取得、メンタル不調による休職……。「先生が足りない」というリスクは今後ますます高まります。  「未配置」の穴埋めで現場が倒れてしまう前に、時間外勤務の削減と、給特法の抜本的な見直し(残業代の支払い含む)が急務です。

教頭職の多忙さを考える:10年前の経験と教育DXがもたらす変化

私が教頭職を務めていたのは10年ほど前までですので、現在の状況とは異なる部分もあるかもしれません。当時は「教頭は校長より早く出勤し、校長より遅く退勤する」という暗黙の了解のような空気がありました。しかし、私はそれを頑なに守る必要はないと考えていたため、自分の仕事が終われば校長より...