ドラマの中で「保健室登校」の場面が描かれていました。実際、保健室登校をする子どもは存在し、多い学校では複数の児童生徒が保健室に集まっているのが実態です。
彼らは「教室には行けないけれど、学校に自分の居場所があれば登校できる」という状況にあります。つまり、保健室が校内で唯一の安心できる居場所になっているのです。学校の状況によっては、空き教室を活用して「特別支援教室(あるいは適応指導教室など)」「校内適応指導教室」「校内フリースペース」「別室」を設け、教室に入りづらい子どもたちを集めている場合もあります。しかし、そうした特別な教室があっても、あえて保健室を選ぶ子どもたちがいるのが現状です。
本来、保健室の第一の役割は身体的な不調への対応です。そのため、かつては自治体によって、看護師免許を持つ人を養護教諭として積極的に採用していた時期もありました。しかし、養護教諭は「教諭」という名称の通り、あくまで教育職員(先生)であり、医療従事者(看護師)ではありません。医療行為ができるわけではなく、その本質的な役割は、子どもたちの心身の健康な発達を促す「健康教育」の実践や、健康維持のための教育活動にあります。また、多くの養護教諭は全校生徒と関わるため、驚くほど多くの子どもたちの名前や特性を把握しています。
子どもたちにとって「保健の先生」は、心身のつらさを感じたときにいつでも助けてくれる存在です。学校経営の視点からも欠かせない存在であり、経験豊富な養護教諭は、校長にとっても大きな安心感をもたらします。この子どもたちや学校全体に与える「安心感」こそが、保健室登校という選択肢を生む背景にあると考えられます。
一方で、保健室登校には学習面での課題があります。養護教諭は教科指導を行うことができません。もちろん、子どもが教室から持参した課題を保健室で自習する様子を見守ることはありますが、教室と同様に新しい単元の学習を進めるのは困難です。さらに、養護教諭は教頭や事務職に匹敵するほどの膨大な事務書類を抱えています。特に年度初めの2ヶ月間は一斉健康診断の対応に追われるため、保健室登校の子どもだけに注力できないという現実的な問題もあります。
保健室登校の子どもが多い学校では、かつて非常勤の養護教諭が追加配置されることもありました。正規の養護教諭が本来業務を進め、非常勤の養護教諭が保健室登校の対応に当たるためです。それほど対応を必要とする子どもが多いという証左でもあります。加えて、現代の学校現場では、熱中症対策、胃腸炎などによる嘔吐処理、食物アレルギーへの緊急対応など、養護教諭の守備範囲は広がる一方です。そのような多忙を極める状況下でも、先生方は子どもたちに優しく笑顔で接し、子どもたちもまた、それを頼りにしています。
なお、日本の「養護教諭」は独自の職種です。海外の「スクールナース(学校看護師)」とは役割や位置づけが大きく異なります。
今日もきっと、全国の保健室で、ちょっとした愚痴をこぼしたり、友達との関係を相談したりしながら、先生の存在に救われている子どもたちがいるはずです。

