私が教頭職を務めていたのは10年ほど前までですので、現在の状況とは異なる部分もあるかもしれません。当時は「教頭は校長より早く出勤し、校長より遅く退勤する」という暗黙の了解のような空気がありました。しかし、私はそれを頑なに守る必要はないと考えていたため、自分の仕事が終われば校長より早く帰ることもありました。
教頭の職務内容は自治体や学校によって様々ですが、ここでは私が実際に経験したことをベースに、その一日の流れを振り返ってみます。
当時は朝7時30分前に出勤し、まずは校舎内を巡回して必要な場所の鍵を開けて回りました。学校によっては、校舎の周囲を見回る教頭先生もいると思います。 その後、7時45分ごろからは校長、教頭、教務主任による「朝の打ち合わせ」を行っていました(もちろん、これは勤務時間外の割り振りのない時間です)。ここでは一日のスケジュール確認や、課題の協議を行います。 打ち合わせが終わると、登校してくる子どもたちに挨拶をするために校門に立つか、あるいは電話対応に追われました。現在では、職員室に補助職員が配置されて電話対応を代行してくれたり、欠席連絡の手続きがアプリ化されたりしている学校が多いのではないでしょうか。これにより、朝の電話対応に割かれる時間は大幅に減っているはずです。
また、職員の出勤状況の確認も教頭の重要な仕事です。もし急な欠勤や病休の先生がいれば、その日の補欠授業の手配など、対応策を練るのも教頭の役割となる学校が多いでしょう。
ところで、校長には校長室があり、担任や専科の先生方にはそれぞれの教室があります。しかし、教頭だけは個室がありません。「職員室こそが教頭の教室だ」と言われたこともありますが、様々な書類を扱う特性上、事務スペースはある程度広く確保されるべきだと感じています。
午前中は、突発的なトラブルがなければ基本的に事務ワークに没頭します。教育委員会から届く大量のメールをチェックし、回答が必要なものや提出書類の作成をこなしていきます。午後になり、授業を終えた先生方が職員室に戻ってくると、様々な相談や対応案件が持ち込まれます。そのため、「書類仕事はできるだけ午前中に終わらせておきたい」というのが教頭の本音です。 しかし、いざトラブルが発生すればその対応に追われ、保護者や地域の方々からの相談窓口にもなります。「誰の仕事か分からない業務」は、結果的に「学校の便利屋」である教頭に集約されがちなのが現状です。
ここまで多忙な側面を書いてきましたが、私自身は教頭職の時代に「嫌だな」と思ったことはあまりありませんでした。ある意味では、組織の方針(校長の指示)に沿って実務を実直にこなしていけばよいという側面もあったからです。最終的な責任を負って大きな決断を下す場面は校長より少ないため、その点では心理的に気楽な部分もありました。実際、その後に校長を務めていたときの方が、精神的なプレッシャーや辛さは圧倒的に多かった記憶があります。
昨今、教育DXが進む中で、教頭職の業務イメージも変わりつつあります。自治体によって教頭と事務職員の業務分担(テリトリー)は異なりますが、ICTの活用によって業務自体は以前より効率化され、楽になってきているのではないでしょうか。さらにこれからは、生成AIの活用によって、事務負担はより一層軽減されていくはずです。
巷ではよく「教頭職には就きたくない(管理職忌避)」という声を耳にします。しかし、私は教頭職を決して「辛くて大変すぎる業務」だとは思いません。「校長より遅く帰らなければならない」というのもおかしな話です。今の時代、民間企業でも「課長が残っているから係長が帰れない」という職場は少なくなっているでしょう。
教頭自身が「自分の働き方」への意識を変えることはもちろん、それ以上に、校長の意識改革も強く求められているのではないでしょうか。


